ガス窯のレンガが割れる3つの原因

その 1,レンガ選定に問題がある場合

まず、レンガの選び方を間違えると割れやすい。
ある意味当然の話だが、「なぜこんなレンガで作ってあるのだ?」と不思議に思うことがある。
レンガ製品にもカタログがあり、いろいろな情報がのっている。
その中に、「残存線変化率が±2%を超えない温度(°C)」というものがある。
こう表示してあるのは A 類、B 類、C 類の JIS 規格耐火断熱レンガである。
これらの製品は、窯の設計温度より 200~300°C安全をみた品種を選定するようにとカタログ表示してある。

例えば、窯の最高温度を 1,300°Cと設計した場合、耐火断熱レンガは‘残存線変化率が±2%を超えない温度
(°C)’=1500(A7,B7,C3)を最低限選ばなければならない。
「安全をみる」ということは「それより低い温度で使いなさい」という意味なので、1500-200=1300°Cなら安全範囲内だが、1500-300=1200°C(<1300°C)だと加熱した際、熱によって傷んでしまうことになる。
JIS 規格の A 類、B 類、C 類では‘残存線変化率が±2%を超えない温度(°C)’の最高値は 1500 であるから、
1300°C近くまで昇温の可能性がある陶芸用ガス窯では使用できないことになる。
ところが意外とこういったレンガを選んでガス窯ができていることがある。

その 2,レンガの積み方

レンガの積み方にはいろいろな方法があるが、基本的な考え方としては 2 つあると思われる。
ひとつは、修理することを前提とした積み方である。
耐火レンガを使用した穴窯や登り窯の床部分は、投入された薪や流れ落ちた釉薬で傷む場合が多い。
こういった部分は交換しやすい築炉方法を採用したほうが良い。
しかし、炉壁は簡単に交換でいないからしっかりと組んでゆく。断熱レンガのガス窯炉壁を築炉するにあたって、修理しやすい考え方を採用すると、返って傷みやすい炉壁となってしまうことが多い。
具体的には、炉壁の中心部と角にセラミックファイバーをそれぞれ一本タテに通して、モルタルで接着しない築炉方法だ。確かにこの方法だと傷んだ部分は切除しやすいが、長く使用するとレンガがひとつの大きな塊となって炉内側に倒れ込んできてしまう。
修理しやすいがゆえに、返って傷みやすい結果になってしまっているのだ。

そこでもう一つの考え方は、そもそも傷まないように築炉して、できるだけ修理しない積み方である。
当社はこの考え方を取っている。
以前、耐火レンガで登り窯を作る H 氏と仕事をしたことがあった。
H 氏のレンガ積みは、レンガが傷んだら簡単に外して直せるようにという意図で積んでいる。
どれくらい先になるかは不明だが、必ず傷む時が来るのでその時に容易に作業ができるためだ。
これに対して、私は、断熱レンガを使用するガス窯の場合は傷んだら交換しやすいようにというよりは、できるだけ傷まないようにレンガを積んでいく、という考え方である。
その工夫としてあげられるのが膨張目地の施工がある。

加熱と冷却を繰り返す陶芸用のガス窯のレンガは、炉内側と外側では大きな温度差が出る。

レンガと温度と炉壁の厚さ イソライト工業(株)カタログより

たとえば Max1500°Cのレンガで炉内側 1200°Cのとき 230 ㎜外側になると665°Cまで下がる。つまり
535 度の温度差があることになる。レンガは高温になると膨張し、冷えると元に戻る。。炉内側は
高 温 なので膨張するが、たった230㎜離れているだけで 535 度の温度差が出てしまうのだ。
その時のレンガの形は炉内側が長い台形をしている。

耐火断熱レンガのような耐火物は、高温度に長時間さらされたとき、または繰り返し加熱されたときに膨張収縮を起こし、元の寸法より膨張あるいは収縮をする。(この現象を「再加熱膨張収縮」という)
そこでレンガを積む際、この膨張と収縮があってもレンガが割れないように膨張できる余裕を作っておく。
この余裕を最も割れが入りそうな場所に最低限作っておき、あとはしっかりとモルタルで組んでゆく。
この方法のほうが長期的に見て傷みは少ないというのがガス窯を作ってみての印象である。

傷むことを前提にレンガを組んで修理しやすくするよりも、傷まないようにレンガを組んで修理しない方法のほうが長期的に見てベストと考えられる。

その 3,モルタルの調合

モルタルの調合は意外と重要である。
なぜか?


1, 耐火断熱レンガは膨張収縮する
2, 窯の温度は均一ではない。
3, 二種類以上の異なるレンガで窯を作っている
ことがあげられる。

陶芸窯は常に加熱と冷却を繰り返すので、耐火断熱レンガは膨張収縮する。しかも窯は温度差があるので、高温部は膨張が大きく少し低いところでは膨張も小さい。これらを緩衝するために膨張目地を入れるが、それでも抑えきれない。そこでモルタルの接着を弱くしてレンガがある程度自由に動けるようにするのだ。
紙やすりの上にレンガを置くイメージである。こうすることでレンガ一つひとつの自由度が増し、割れが少なくなる。
これとは逆に、モルタルの接着を強くすることもある。

それは台車である。
台車は鉄によるケーシングで囲まれていないから、レンガの接着が良いほうがかえって傷みは少ない。
また、台車には 4 種類のレンガを使うのでそれぞれの特性を生かすために配合を変える。
このようなことからモルタルの配合は以下のように全部で 3 つ作ることになる。
1, 標準のモルタル:扉やバックアップレンガなどに使用する。
2, 接着を弱めたモルタル:炉壁に使用する
3, 接着を強めたモルタル:台車に使用する


丈夫で長持ちするガス窯を作るためには、組んだレンガがまず熱によって割れないことである。
そのためには、


1, 適正なレンガの選定
2, レンガの組み方
3, レンガに合ったモルタルの配合
が重要と考える。

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