パレートの法則とやきもの(2)時間の場合

やきものを窯で焼くとき、釉薬の色が決定する温度帯というものがある。
それは1,050~1,150℃である。
測定結果や測定機器の誤差などでも変わってくるが概ねこの100度の間だと考えていい。
ではこの100度を何時間ぐらいで昇温すればよいのかというと、ガス窯では3時間以上である。

やきものを焼く場合、その温度について述べられている文献は多いが、不思議なことに時間について述
べられていることは非常に少ない。もしくは曖昧である。
窯で焼くということは窯の中で熱による化学反応を起こさせることである。
化学反応は1,000℃を超えると非常に活発化する。
そのため焼成過程でおおよそ1,000℃あたりから「セメ」という状態に入る。
登り窯や穴窯で主に還元焼成に切り替える際に「セメに入る」といわれる。
薪を燃料にした窯の場合は、いよいよ窯焚きもクライマックスになることからセメといわれたのだろう。しかしガス窯ではそういった意識は強くないが、伝統的にはガス窯でもセメという。

では1,150℃という温度は何か。
それは施釉された釉薬が全体的に溶ける温度である。
ほとんどの釉薬にはその色を出すために酸化金属が混入されている。酸化金属は炉内の酸素や一酸化炭
素によって酸化や還元という化学反応が起こる。
ところが、その化学反応は釉薬が溶けてガラス化し始まるとブロックされて反応が行きわたりにくくな
る。したがって釉薬が完全に溶けきらないで、表面がざらざらしたマットな状態のときに終わらせなけ
ればならない。釉薬は窯の中で1050~1150度の間でその色が決まる、ということである。
もちろん上下に多少の差はあるし、釉薬によっては冷却過程でも色が変わるものがある。この100度の
間が最も反応が活発であるということだ。
ガス窯では、一旦窯の状態を酸化や還元雰囲気になるように合わせれば、そのままの状態を維持してい
くので、非常に安定している。

したがってあとはその状態をどれくらいの時間続ければよいのか?ということになる。
それが3時間以上、1050~1150の間の100度を一時間当たり平均して33度以下で昇温させると釉薬の色
は決まりやすい。
さて、ここからが本題、パレートの法則だ。
やきものを焼くとき、特にガス窯ではその焼成時間は17~18時間かけられることが多い。
多くの人がそうであって必ずしもこの焼成時間があてはめられるものではないが、点火から焼き上げま
でが概ね17~18時間かかるということである。
パレートの法則は、原因、投入、努力のごく一部(20%)が結果、産出、報酬のかなりの部分(80%)
をもたらすという法則である。

ここでは焼成時間の全体を17時間で考えてみる。
17時間の20%は3.4時間。つまり3時間と24分。
焼成時間の20%を釉薬の色が変化する時間に費やされることによって、安定した釉調が得られるのだ。
やきものの焼成過程において、経済学などで用いられる有名な法則を当てはめる、というのも少々無理
な話かと考えていたが、これがぴったりと来るのでびっくりしている。

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